課程認定審査は誰が行っているのか
- 現状では審査委員は非公表
- 2021年度申請分に係る審査から委員が公表される
- 課程認定委員会委員を推測する方法(その1)
- 課程認定委員会委員を推測する方法(その2)
- 注意事項
- さいごに~本記事の活用方法~
現状では審査委員は非公表
課程認定審査は、教員養成部会の専決事項となっていますが、実際の審査は当部会の付託を受けた課程認定委員会が行っています(教職課程認定申請の手引き、p.1)。課程認定委員会の委員構成は、現状では非公表となっています。公表した場合、教育研究業績等の審査内規を聞き出すために審査前に接触したり、認定されなかった大学からの批判が個人に寄せられ、結果として審査段階での自由な意見交換が阻害されたりすることが考えられます。これを避け、自由で公正な審査を行うための措置だと考えられます。
2021年度申請分に係る審査から委員が公表される
令和3年11月の「教職課程認定審査運営内規」の一部改正により、2021年度申請分から、認定手続きがすべて終了した後に課程認定委員会の議事要旨が公開されることとなりました。公開イメージとして示された議事要旨には、「出席者」の項目が設けられており、「〇〇委員(主査)、〇〇委員(主査代理)、〇〇委員、〇〇委員…」といった具合に委員の公開が予定されています。
ただし、姓のみ(例:佐藤委員)かフルネーム(例:佐藤太郎委員)かまでは現時点では分かりません。
課程認定委員会委員を推測する方法(その1)
公表を待たずとも、委員を推測する方法があります。教職課程認定大学実地視察(以下「実地視察」)の視察委員から推測する方法です。実地視察は原則として教員養成部会または課程認定委員会に所属する委員が行う(実地視察規程2(2))こととされており、実施後に公表される実地視察報告書(実地視察規程5(2)及び同(3))に視察委員がフルネームで掲載されています[1]。ここに掲載された方々が課程認定委員会委員である可能性があります。
以下では、2016-2018年度に実地視察を担当した方を抽出し、どのような研究分野の方が課程認定審査を行っていそうかの把握を試みたいと思います。氏名の横には括弧書きで研究分野を記載しましたが、これは当該教員の所属する大学ホームページまたはresearchmapから確認したものです。
なお、以下の方々が教員養成部会と課程認定委員会のいずれの委員なのかまでは分かりませんので、実際の審査には関与していないことも考えられます。また、実地視察は文科省組織規則34条に定める視学委員が担当する場合もあり、これに該当する者が含まれている可能性もあります(視学委員は課程認定審査に関与しない)。
【委員予想】
・坂越正樹委員(教育哲学、教育思想史)
・伏木久始委員(教育学、教師教育学、カリキュラム開発)
・釆女智津江委員(ライフサイエンス、体育、身体教育学、健康科学)
・森山賢一委員(教育内容・方法学、教師教育学)
・粕谷恭子委員(外国語教育)
・藤井基貴委員(教育学、研究倫理、授業開発、教師教育・教職課程)
・高山芳樹委員(英語教育学)
・太田光洋委員(保育学、幼児教育学)
・本図愛実委員(教育制度、学校経営、教育行政)
・遠藤貴広委員(「真正の評価」論、カリキュラム研究、学校改革)
・高橋純委員(教育工学、教育方法学、教育の情報化)
・和泉研二委員(無機・錯体化学、基礎物理化学)
・谷田増幸委員(道徳教育、公民科教育「倫理」、教育哲学、教育課程)
・野﨑武司委員(教科教育学、授業研究)
・髙旗浩志委員(教育学、教育社会学)
・佐々祐之委員(数学教育学)
・関戸英紀委員(障害児教育)
・渋谷治美委員(カント思想、総合人間学)
・赤沢早人委員(社会科教育、問題解決学習、授業論、カリキュラム論、教育方法学)
・一木薫委員(特別支援教育、肢体不自由教育)
課程認定委員会委員を推測する方法(その2)
もう一つ、教職課程コアカリキュラムを作成する際、「教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会」の下に「教職課程の目標設定に関するワーキンググループ」が設置されました。委員が公表されていますが、コアカリ作成経緯と課程認定審査での活用も踏まえれば、この名簿の中にも課程認定委員会委員が多く含まれているのではないかと考えられます。
ただし、2016-2017年度の会議体ですので、現在も審査委員を務めているかは不明です。
注意事項
あくまでも筆者の推測に基づく、調査方法論的根拠のない推測です。実際の審査委員と断定したわけではありませんので、その点ご理解ください。
なお、実地視察報告書においては、フルネームで上記氏名が公表されていますので、ここでもフルネームで記載することは問題ないと判断しました。
参考までに、課程認定審査に類似する設置認可審査においては、審査経過や審査委員等の審査段階における非公表情報も、審査が終了した翌年度以降は情報公開の対象とされ、ホームページ上で公開されています。
さいごに~本記事の活用方法~
どのような研究分野の方に審査されるのかが分かれば、申請様式(特に教育研究業績書)をどのような観点で見られるかもなんとなく見えてきます。審査の観点が見えてくれば、書類作成の際の力の入れ所、抜き所も見えてこようかと思いますので参考になれば幸いです。
[1] 2018年度実施分までは視察委員がフルネームで公表されていましたが、2019年度実施分から視察委員が公表されなくなってしまいました。