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どこかの大学職員のブログ

実地視察が当たりやすい都道府県はどこか?

 

教職課程認定大学実地視察の概要

用語

視察の根拠は「教職課程認定大学実地視察規程」(平成13年7月19日教員養成部会決定)に定められており、ここでは「教職課程認定大学実地視察」という用語が使われています。一方、視察の後に公表される報告書においては、2010年度実施の報告書から「教職課程認定大学等実地視察」と「等」が加えられています。この「等」は指定教員養成機関[1]を指しています。実際に指定教員養成機関に対し視察が行われるのは、2012年に「指定教員養成機関実地視察規程」(平成24年2月15日教員養成部会決定)が定められて以降となりますが、毎年1~3機関程度が視察の対象となっています。

 

ねらい

視察の目的は、教職課程の「水準の維持・向上を図るため」(視察規程1(1)。以下同じ。)と定められていますが、報告書ではもう少し具体的に「認定及び指定時の課程の水準が維持され、その向上に努めているかどうかを確認すること」と示されています。視察規程の文言だけでは分かりづらいですが、報告書の記述からは認定後のチェック機能としての役割を有していることが分かります。

 

観点

視察の観点として、次の7点が示されています(2(1))。

  1. 教員養成に対する理念、設置の趣旨等
  2. 教育課程及び履修方法
  3. 教員組織
  4. 施設・設備(図書等を含む。)
  5. 教育実習の実施計画、教育実習校等
  6. 学則
  7. 学生の教員への就職状況

当初は、1を除く6つの観点でスタートしましたが、2006年の中教審答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について(答申)」において「今後は、大学の教員養成に対する理念や教職課程の設置の趣旨、責任ある指導体制等を審査対象とすることが適当である」と提言されたことを受け、2006年度実施分から新たな観点として追加されました。同答申を受け、2007年度の課程認定申請から様式第8号(認定を受けようとする課程を有する大学・学科等における教員養成に対する理念等に関する書類)[2]が新たに設けられますが、その前年度に実地視察の観点として位置付けられていた点は興味深いです。

 

視察委員

視察を担当する委員等は次の方々です。

  1. 教員養成部会、課程認定委員会に所属する委員
  2. 視学委員(文部科学省組織規則34条)
  3. 都道府県及び市区町村担当者
  4. 文部科学省担当官

視察は主に1、2の方々が行い、3は「参加させることができる」(2(6))であり、4は「同行し、事務にあたる」(2(5))ことが役割です。

この「誰が視察を行うか」という観点も制度の変遷があり、当初は教員養成部会、課程認定委員会の委員のみが定められていましたが、2006年度から「都道府県及び市区町村の教育委員会」を参加させることができる旨が追加されます。この規定は2016年度から「都道府県及び市区町村担当者」とややあいまいな文言に改められます。おそらく、参加させることのできる対象を教育委員会に限定せず、拡大するという趣旨だと思われます。2009年度からは視学委員[3]が担当者として加えられます。

 

報告書

視察の結果については、大学ごとに報告書が作成され、文部科学省ホームページ(HP)において公表されています。

www.mext.go.jp

 

 

直近10年の視察数の整理

単純集計

以上が視察の概要ですが、以下では、視察の数と地域に着目し、上記HP等で公表されている直近10年(2010~2019年度実施分)のデータを整理します。

なお、イチからデータの整理を行ったわけではなく、大学教務実践研究会教員免許事務プロジェクトのHPにある「実地視察対象大学一覧(2020.4.1現在の課程認定大学)」のファイルをもとに、掲載データの確認・加工を施し集計を行っています。借用させていただいたことをここに明記します。

単純集計結果は下表のとおりです。

直近10年間の教職課程認定大学実地視察数(単純集計)

(注1)短期大学には短期大学部を含んでいます。

(注2)同一法人内の大学・短期大学(部)が同一年度に実施されている場合には、それぞれの学校種で1としてカウントしています。

(注3)2010年度に株式会社立の日本教育大学院大学が視察対象になっていますが、後に経営母体が学校法人に変更になっていることに鑑み、大学/私立にカウントしています。

 

2017年度を境に実施数が減少していますが、これは2017年度が再課程認定の申請年度、2018年度が審査年度であったため、「各大学において、法改正に伴う新しいカリキュラムの検討や設計、また再課程認定の準備作業が発生することを考え」(教員養成部会(第99回)議事録、坂越委員)、視察数を制限したことが述べられています。それでも2017年度に国立1大学に対し視察が行われたのは、「長期間にわたって認定された教職課程を変更する届出の提出漏れがあった」(同上)ためだそうです。2018年度においても、「教職課程再課程認定の作業が発生することを考慮して、…特に問題のある大学、そしてその近隣の大学というところに絞って」(教員養成部会(第106回)議事録、坂越委員)視察が行われたことが説明されています。

なお、再課程認定を挟んでの実施数の減少は私立大学と短期大学の実施数の減少として現れていることがうかがえます。

 

地域別

次に、大学の所在する都道府県別に集計したものが下図です。

直近10年間の教職課程認定大学実地視察数(地域・都道府県別)

 

数字は、直近10年間で視察を受けた当該都道府県に所在する大学の述べ数を表しています。正確に分析するには各都道府県に所在する大学等数との対比で数を捉える必要があるでしょうが、ここではそこまで踏み込みません。

文科省のお膝元の東京都は、大学数が多いことに鑑みても、42という実施数は多いような印象です。この記事にデータは示していませんが、実施年度別にみても、再課程認定にかかる2017、2018を除き、毎年度都内のどこかしらの大学が対象に選定されています。次いで、兵庫県18(2010、2011、2012、2013、2014、2015、2016)、大阪府18(2010、2011、2012、2013、2014、2016)、愛知県11(2011、2012、2013、2014、2015、2016、2019)が比較的選定されていました。

逆に、福井県(6大学1短期大学)と徳島県(4大学3短期大学)はこの10年間で一度も選定されていませんでした。旅費の関係で、北海道と沖縄は視察数が極端に少ないと予想しましたが、他と比べて差はないように思えました。そしてやはり、新幹線の開通していない県は選定されにくい傾向にあるようでした。

 

 

 

[1] 教員免許制度が創られた当時の教員需要の増加に対応するため、「大学における教員養成」を補完するものとして設けられた制度。大学以外の機関でも指定を受けることにより教員養成が可能になる。一覧はこちらから。

[2] 現在の様式第7号に該当。

[3] 初等中等教育局に置かれる視学委員を指し、「命を受けて、初等中等教育について特に指定された事項に係る専門的、技術的な指導及び助言に当たる」(文部科学省組織規則34条2項)ことが役割として定められています。