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どこかの大学職員のブログ

「大学設置基準の一部を改正する省令案骨子案」を受けた教職課程認定基準の改正予想

 

はじめに

今年2月に質保証システム部会の審議まとめ(素案)が提出された際に、課程認定制度(審査)への影響予測を記事にしました。

 

startingover-kyousyoku.hatenablog.com

 

 

上記の審議まとめを受け、6月22日に開催された大学分科会では、より詳細な大学設置基準(以下、「設置基準」)改正骨子案が示されました。

教職課程は、学位課程との相当関係が要求され、その下に置かれることとなるため、設置基準の改正は教職課程を認定する際の基準(教職課程認定基準。以下、「認定基準」)に影響します。

認定基準にどのような改正が生じそうか予測してみました。

 

教職課程認定基準の改正予想

総則

改正設置基準では、自己点検・評価、認証評価の結果を踏まえ、不断の見直しを行う旨明確化が図られる予定です。

大学設置基準総則(第1条第3項)の新旧表

 

認定基準の総則は明らかに設置基準の規定を参考にしていますし、今年度から教職課程の自己点検・評価も新たに義務化されましたので、同様の趣旨で認定基準1(3)の改正が行われるのではないかと考えられます。例えば下表のように。

教職課程認定基準総則(1(3))の新旧表

 

教員組織

教員組織について、事務職員等も参画し教育研究活動を行うことを明確化する観点から、「教育研究実施組織」に用語を改める案が示されています。

認定基準では、3、4、5の見出しが「教育課程、教員組織(免許状の種類にかかわらず共通/一種免許状・二種免許状の課程認定を受ける場合/専修免許状の課程認定を受ける場合)」となっていますので文言修正が考えられます。

なお、2008年度以降の教職課程認定大学等実地視察において、教務関係事務の資質向上を図るため、事務体制に問題がある大学に留意事項が付されるようになっています。設置基準改正の趣旨と実地視察の運用に鑑みれば、教職課程運営への事務職員等の参画も新たに規定される可能性も(わずかに)あると思います。

 

 

専任教員

最も大きな影響を受けそうなのが「専任教員」に関する基準です。設置基準の改正内容案は次のとおりです[i]

「一の大学に限り、専任教員となる」旨の現行の専任教員に係る規定(第 10 条、第 12条、第 13 条等)について、クロスアポイントメント等の働き方の多様化や民間からの教員登用の促進等の観点及び質保証の観点を踏まえ、これらを改め、新たに「基幹教員」として教育課程の編成その他の学部の運営について責任を担うことなど定義を明確化したうえで、最低必要教員数(第 13 条、別表第 1、別表第 2)の算定にあたり、複数の大学・学部での算定も可能とすることやその算定は 4 分の 1 までとする…改正を実施する。

 

「複数の大学・学部での算定も可能とする」に関して、現行の、当該学科等に籍を有する必要がある(認定基準3(7)確認事項3(1))という考え方は改められると考えられます。

改正設置基準に定められる「基幹教員」の定義は現時点では次のとおりです[ii]

教育課程の編成その他の学部の運営について責任を担う教員(助手を除く。)であつて、当該学部の教育課程に係る主要授業科目を担当するもの(専ら当該大学の教育研究に従事するものに限る。)又は一年につき八単位以上の当該学部の教育課程に係る授業科目を担当するもの

教職課程の文脈で読めば、一つ目の要件(教育課程の編成その他の学部の運営について責任を担う)については、すでに確認事項3(1)②で規定されていますが、二つ目の要件(当該学部の教育課程に係る主要授業科目を担当するもの又は一年につき八単位以上の当該学部の教育課程に係る授業科目を担当するもの)をどう適用するか(あるいはしないか)が問題になります。

「主要授業科目」といえば、教職課程では一般的・包括的科目が想定されますが、これをそのままあてはめるような単純なものではないでしょう。「一年につき八単位以上」に関しても、「八単位」の算出方法は学位課程と教職課程とでは異なるでしょう。また、現行のみなし専任教員(認定基準4-3(5)ⅰ)(※2)ほか)は1科目でも担当すれば専任教員扱いすることが可能なので、こことの整合も必要だと思います。

 

「その算定は4分の1までとする」に関して、教職課程で必要とされる教員数は設置基準で要求される教員数に比べて少なく、「4分の1」をそのまま適用すると、意味をもたない場合(例えば、中高(国語)の「教科に関する専門的事項」であれば「3人以上」が最低数なので、4分の1=0.75までとすると1に満たない)が起こり得ます。よって、専ら当該大学の教育研究に従事しない教員をどの程度カウントできるかは、認定基準オリジナルの考え方が必要そうです。連携教職課程を設置する場合の要件(認定基準9)を援用して、「1未満の場合には1人とする」(認定基準9(4))ということも可能かもしれません。

 

教育課程等に係る特例制度

これに関しては、教員養成分野ではすでに「教員養成フラッグシップ大学」が稼動しています。フラッグシップ大学の成果が認定基準の反映に生かされることは今後あろうかと思いますが、設置基準の改正がすぐに認定基準の改正に影響することはないように思います。

 

適用時期

改正設置基準の適用時期について、附則において次のように定められる予定です[iii]

・令和5年度開設の設置審査については、従前の規定のとおりとすること

・令和6年度開設の設置審査については、改正後の規定又は従前の規定のいずれかで審査を受けられること

・令和7年度以降開設の設置審査については、改正後の規定で審査を受けること

 

改正設置基準の適用年度と改正認定基準の適用年度がズレることはあまり考えられません。よって、改正認定基準の適用も上記と同様になるかと思います。その場合、令和6年度開設までに改正基準を決定しておく必要がありますが、令和6年度開設の場合の課程認定申請年度は今年度(令和4年度)なので、今年中に改正しなければならないことになります。果たして間に合うでしょうか…。

なお、大学院に関する基幹教員の取扱いについては、別途、大学分科会大学院部会においても検討されるということなので、専修免課程の教員カウントの考え方、その適用時期については今後注視が必要です。

 

おわりに

上記はあくまで推測ですが、いずれにしろ、今年中に改正の方向性は示されるのではないでしょうか。

 

 

[i] 2022年6月22日開催中央教育審議会大学分科会(第168回)会議資料、【資料2-1】大学設置基準等の一部を改正する省令案骨子案、2頁。

[ii] 改正設置基準第8条第1項。

[iii] 2022年6月22日開催中央教育審議会大学分科会(第168回)会議資料、【資料2-1】大学設置基準等の一部を改正する省令案骨子案、8頁。