404 NOT FOUND

どこかの大学職員のブログ

教職課程における「ただし書教員」とはなにか?

 

「ただし書教員」という新たな概念の登場

前記事では、教職課程認定基準(以下「認定基準」)の改正案が提示されたことを受けて、「教職専任教員」の定義と解釈を整理しました。

「教職専任教員」としてカウントできる場合の一つに、「ただし書教員」があります。本記事では「ただし書教員」とはどのような教員を指すのかを整理してきたいと思います。

 

「ただし書教員」とは、今回の改正で新たに登場した概念です。認定基準中、幼小中高特の項目に規定されていますが、考え方は学校種によらず同じですので、ここでは幼稚園の規定を引用します。

4-1 幼稚園教諭の教職課程の場合

(3)略

(※4)3(7)の規定にかかわらず、大学設置基準別表第1イ(1)備考第2号、大学通信教育設置基準別表第1備考第2号、専門職大学設置基準別表第1イ備考第2号、短期大学設置基準別表第1イ備考第2号、短期大学通信教育設置基準別表第1備考第3号又は専門職短期大学設置基準別表第1イ備考第2号のそれぞれのただし書に定める基幹教員で、3(7)②から④までの事項を満たす者(「ただし書教員」という。以下、必要教職専任教員の規定において同じ)は、本表の必要教職専任教員数の合計の4分の1の範囲内で当該学科等の必要教職専任教員数に算入することができる(ただし、本表①、②及び③にそれぞれ配置する1 人については、専ら当該学科等の教育研究に従事する者とする)。

 

参照条文が念仏のようですが、多くの大学にとって必要な箇所は「大学設置基準別表第1イ(1)備考第2号…のただし書に定める基幹教員」部のみだと思います。

次にこの規定を確認します。

 

大学設置基準の参照条文の確認

大学設置基準別表第1イ(1)備考第2号の規定は次のとおりです。

別表第一 学部の種類及び規模に応じ定める基幹教員数(第十条関係)

イ 略

(1) 略

備考

一 略

二 この表に定める基幹教員数には、一の基幹教員は、同一大学ごとに一の学部についてのみ算入するものとする。ただし、複数の学部(他の大学若しくは専門職大学に置かれる学部又は短期大学に置かれる学科を含む。以下この号及び次号において同じ。)において、それぞれ一年につき八単位以上の当該学部の教育課程に係る授業科目を担当する基幹教員は、当該学部について当該基幹教員数の四分の一の範囲内で算入することができる((2)及びロの表において同じ。)。

 

以上を整理すれば、認定基準がいう「大学設置基準別表第1イ(1)備考第2号…のただし書に定める基幹教員」とは「複数の学部(他の大学若しくは専門職大学に置かれる学部又は短期大学に置かれる学科を含む。略)において、それぞれ一年につき八単位以上の当該学部の教育課程に係る授業科目を担当する基幹教員」(以下、便宜上これを「複数学部8単位教員」と呼びます)だということが分かります。

 

基幹教員

次に、複数学部8単位教員を解説していきますが、ここからは認定基準を一旦離れ、大学設置基準(以下「設置基準」)の解説となります。

 

改正前の設置基準では、「一の大学に限り、専任教員となる」旨規定されており、クロスアポイントメント等を除いては一の大学・学部の専任教員としてのみカウント可能でした。これが先般の改正により、「専任教員」の概念は「基幹教員」と改められ、基幹教員は複数の大学・学部で算入することが一定の範囲内において可能となりました。

複数の大学・学部で基幹教員としてカウントするための条件の説明は割愛しますが、これを図示すると下図のようになります。

基幹教員概念図

図を基に、複数学部8単位教員の属性を整理すると、

  • 当該大学に所属しない教員で年間8単位以上の授業科目を担当する教員(B)
  • 当該大学に所属し当該学部の授業を担当する教員で年間8単位以上の授業科目を担当する教員(専ら当該学部以外の学部の教育研究に従事する者に限る)[1](A´)

誤解が生まれる可能性を承知で換言すれば、

  • B=自学部の科目を年間8単位以上担当する非常勤講師
  • A´=自学部の科目を年間8単位以上担当する自大学他学部の教員

となります。

 

教職課程認定基準における「ただし書」教員とは

ここまで複数学部8単位教員について整理しました。頭を再度認定基準に切り替え、「ただし書教員」について説明していきます。

「ただし書教員」の規定を再度示せば「大学設置基準別表第1イ(1)備考第2号…のただし書に定める基幹教員で、3(7)②から④までの事項を満たす者」です。前段は便宜上複数学部8単位教員と呼んだもので、BとA´の2通りに整理しました(BとA´は条件が重なり合うことはありません)。後段は3(7)②から④の規定をそのまま当てはめるのみです。

 

したがって「ただし書教員」とは次の1~4すべてを満たす教員と定義されます[2]

  • 当該学科等の科目を年間8単位以上担当する非常勤講師又は当該学科等の科目を年間8単位以上担当する当該大学他学科等の教員
  • 当該学科等の教職課程の授業を担当する者
  • 当該学科等の教職課程の編成に参画する者
  • 当該学科等の学生の教職指導を担当する者

 

「年間8単位以上担当」は設置基準から導かれた規定で、「教育課程に係る授業科目」ですので、課程認定を受けている(受けようとしている)科目である必要はありません。ただし、2.に定める条件があるので、実際には「8単位以上」のうちいくつかは課程認定科目になるはずです。

 

「基幹教員」となり得るが「教職専任教員」にはなれないケース

注意が必要な点が一つあります。

当該大学他学科等の教員が自学科等の科目を8単位未満しか担当しないが、自学科等の主要授業科目を担当する場合です。この場合、主要授業科目を担当しているので設置基準上は「基幹教員」とすることができますが、8単位未満担当なので「ただし書教員」には該当せず「教職専任教員」とすることはできません。

(この解釈に間違いがあればご指摘ください…)

 

「ただし書教員」活用は基幹教員規定の適用後

なお、「ただし書教員」を「教職専任教員」としてカウントするためには、改正設置基準の基幹教員に関する規定を適用する必要がある旨、2022年11月25日付けの事務連絡で補足されています。基幹教員規定の適用は一部の学部に限って適用することは認められず大学として全学部に一斉適用しなければならない[3]点にも注意が必要です。

 

「ただし書」教員のカウント方法

「ただし書教員」は、一定範囲内(4分の1)で当該学科等の必要教職専任教員数にカウントすることが可能です。何に対する4分の1か、という点は幼小、中高、特で考え方が異なりますので、この点はまた記事を改めて書きたいと思います。

 

※本文中、正確ではない解説がありますので近日中に修正します(2023/2/10追記)。

 

[1] ここでは一旦、主要授業科目の担当有無は問わないこととします(詳細は後述)。なお、専ら教育研究に従事する先が当該学部か当該学部以外かについては、本図からは読み取れませんが、ここでは括弧書きで補足することでお許しください。

[2] 設置基準解説では学部を単位としてきましたが、認定基準では入学定員が付された最小単位の学科を単位とするので、以下では認定基準の規定に合わせ「学科等」を用います。

[3] 文部科学省「令和4年度大学設置基準等の改正に係るQ&A」No.33 https://www.mext.go.jp/mext_02034.html#q33