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どこかの大学職員のブログ

コロナ禍における教職課程運営ー教育実習 編ー

 

 

はじめに

 2020年は新型コロナウイルス感染症の蔓延により大変な1年となりました。多くの大学が4月の授業開始日を繰り下げたり、授業形態をオンラインに切り替えたり、そのほかにも各種式典の中止、教職員の在宅勤務実施、学生への特別給付金の支給、入試実施方法の変更…数え上げればキリがないほど例年にないイレギュラーな対応を求められたことと思います。

 これらの対応事例や検討プロセスは各種シンポジウムや研修会で報告がなされ事例が共有されていますが、教職課程の運営に焦点を当てた事例報告は十分ではないように思います。そこで本記事では、私が所属する大学の教職課程に関するコロナ対応を紹介することで、事例及び知見を共有することを目的とします。

 まずは「教育実習 編」です。

 

事前・事後指導

 教育実習の単位数には、事前及び事後の指導の1単位を含むこと(免許法施行規則第2条第1項表備考第7号)とされていますので、教育実習を開設するすべての大学が実施していることと思います。

 本学では4月第1週から実施の予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、4月実施分を一旦中止し、オンライン実施に移行することを決定しました。4月中に教育実習を所管する委員会の委員が指導内容を動画収録し、Google classroomにアップ、5月から学生に公開し、レポート提出をもって出席とすることとしました。また、メールやアンケートフォームを活用することで学生からの質問等に対応する機会の確保に努めました。

 従来は、附属学校園を訪問し実際の授業場面を観察する機会も設けていましたが、今年度に限っては受入側の感染防止対策の負担も考慮して中止とし、課題提出をもってこれに代えました。

 

教育実習

 2020年4月3日付の文科省通知「令和2年度における教育実習の実施に当たっての留意事項について(通知)」において教育実習の実施時期を秋以降とすることを検討してほしい旨通知がなされました。また5月1日には「令和2年度における教育実習の実施期間の弾力化について(通知)」が各大学等に通知され、これらの通知を受けて、大学内外の受入機関から①実習時期を秋以降で再調整したいこと、②実習日数を3~5日間程度短縮したいこと が大学に伝えられました。

 関係機関との協議を経て、附属学校園における実習は8-9月に実施すること、公立協力校における実習は10-11月に実施すること、実習期間を2/3に短縮することとし残りの1/3は大学における授業により行うことを決定しました。「大学における授業」について具体的には、とある事業の一環で撮り溜めていた附属学校教員の優れた授業実践動画を視聴しレポートを提出する方法としました。

 また、学校現場では秋以降に教育実習の受入が集中することで実習指導教員の多忙化が予想されたことから、実習生が作成する実習日誌を簡素な内容でも可とすることにしました。

 8月下旬の附属学校園における実習が始まって以降、実習生の発熱等による実習の中断・延期、実習校の児童生徒のコロナ感染による中断等もありましたが、幸いなことに教育実習の履修を希望するすべての学生を受け入れていただくことができました。

 

そのほかの対応

 年度当初には上記の4月3日付の通知も踏まえ、教育実習に参加する学生に対し留意事項を周知しました。具体的には、

  • 実習開始2週間前から「健康チェックシート」に体温等を記録すること。
  • 感染リスクの高い場所には行かないこと。
  • マスクを常時着用すること。
  • 濃厚接触者に指定された場合には最後に濃厚接触した日から起算して2週間は教育実習への参加を不可とすること。
  • 実習終了後に感染が判明した場合も速やかに大学に報告すること。

などです。検温に関しては、体温計が入手困難な学生に対して大学保健管理センターが所有する体温計を貸し出すなどの対応も行いました。

 また、当初、学内者も含めた一切の使用を不可としていた学内の図書館に対して、教材研究や実習指導案の作成のために学生が使用することを許可してほしいとの要望書も提出しました。

 さらには、教育実習を所管する委員会の委員で「緊急時における対応当番表」を作成し迅速な初動体制を確保するとともに、委員が交代で毎日附属学校園に赴き、実習生の様子の聞き取り、観察を行いました。

 

次年度の教育実習実施に向けて

 本学では次年度の教育実習に向けた履修登録等のガイダンスを前年の10月に実施しています。従来は大教室に履修希望学生を集めて対面で実施していましたが、今年度はGoogle meetを用いてオンラインで実施しました。また、学生には履修届を紙媒体で提出させていましたが、これをGoogle form での届出に変更しました。この届出に教育実習参加にあたって配慮してほしい事項(持病、食物アレルギー、通勤距離 等)を記入した学生については、オンライン面談を実施し配慮事項の把握に努めました。

 本記事作成時点(2021/01)時点で各教育委員会と次年度の実習日程を相談していますが、まだ確定には至っていません。

 

おわりに

 ここまで本学の対応事例を報告しましたが、with/afterコロナ時代では教育実習のあり方も大きく変わるかもしれません。

 今年度は「大学等における遠隔授業の環境構築の加速による学修機会の確保」として27億円の補正予算が計上され、遠隔授業を行うためのシステムや機材整備に対し補助金が配分されました。ある教員養成大学では遠隔で教育実習を実施するためのシステム構築を申請したとも聞きます。学校現場でしか学べないことも当然ある一方、今年度のような「ハイブリッド型教育実習」が今後さらに普及・発展するかもしれません。