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どこかの大学職員のブログ

コロナ禍における教職課程運営ー介護等体験 編ー

 

はじめに

 前回は「教育実習 編」として事前事後指導のオンライン実施への移行や実習日数短縮への対応等を記事にしました。

 

startingover-kyousyoku.hatenablog.com

 

 今回は「介護等体験 編」として本学の対応事例を紹介します。

 

事前事後指導

 教育実習とは異なり、介護等体験においては事前及び事後の指導を行わなければならない旨は法令で定められておりません。しかしながら、「小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律」第3条第3項に「大学…は、その学生…が介護等の体験を円滑に行うことができるよう適切な配慮をするものとする。」と定められていること及び平成9年11月26日付文科省通知「小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法令等の施行について(通達)」において「大学等においては、介護等の体験において必要な事前指導の実施に格別の協力を願いたい」とあることから、事前指導(場合によっては事後指導も)を実施している大学が多いと思います。

 事前事後指導も含めた介護等体験を単位化し教員養成カリキュラムに位置付けるか否かについては各大学で対応が分かれるところですが、小川(2009)*1による国立教員養成大学・学部を対象とした調査では、一部でも単位化している大学は41.3%*2に上るようです。本学では一切の単位化は行っておらず、特別支援学校における介護等体験、社会福祉施設等における介護等体験のそれぞれで事前指導を4時間実施しています。うち2時間は受入機関の教職員を招き体験内容や参加にあたっての留意事項等を講演していただいています。

 さて、今年度の事前指導ですが、4月に対面形式の事前指導を中止とすることを決定しました。学内委員会での実施方針の検討、受入機関の教職員との実施方法の検討を経て、8月以降にGoogle meetを用いてオンライン(リアルタイム)で実施しました。やむを得ない事由により事前指導を欠席した学生に対しては、これを録画したものを視聴させレポート提出をもって事前指導出席とみなすこととしました。

 

特別支援学校における介護等体験

 特別支援学校における体験は本学では2年次に2日間実施しています。県内の20数校の特別支援学校に協力いただいており、県教育庁が調整役を担ってくれています。例年は5月から体験が始まりますが、令和2年4月3日付文科省通知「令和2年度における介護等体験の実施にあたっての留意事項について(通知)*3によって教育実習同様、秋以降の実施の検討要請が出されました。県教育庁からは9月以降の実施とする旨通知があり、また、受入制限が設けられることとなりました。具体的には、最終年次の学生を除いては当初の申込者数の75%までに派遣学生数を制限してほしいとの内容でした。

 この要望を受け、学内委員会では実施時期を次年度に変更してもよいという学生を募ること、それでも申込み枠を超える場合には抽選を行い派遣する学生を決定するという方針を決めました。結果、70名を超える学生が抽選に漏れ、次年度に実施することとなりました。なお、当該学生たちには、次年度の実施向けた説明会を実施することでフォローを行いました。

 

社会福祉施設等における介護等体験

 社会福祉施設等における体験は本学では3年次に5日間実施しています。県社会福祉協議会が施設との調整及び学生の配当を担ってくれています。例年は5月から体験が始まりますが、4月時点で9月実施分までの体験が中止され、9月以降の実施も未定である旨連絡がありました。6月には、11月から3月までの期間で受け入れる旨連絡がありましたが、申し込んだ学生のうち3割の学生の受入先しか決まらず、残り7割の学生の体験を実施できるか見通しがたたない状況が続きました。10月には県社会福祉協議会から代替措置の適用も視野に入れてほしい旨の連絡があり、学内委員会で対応を検討することとしました。結果、学生及び受入施設の利用者、職員等の健康、安全も考慮し、すでに受入先が決まっていた3割の学生も含め、すべての学生の体験を中止とすることを決定しました。

 

介護等体験代替措置

 令和2年8月11日に公布・施行された「小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律施行規則の一部を改正する省令*4及びこれを受けた同日の文部科学大臣決定「小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律施行規則附則第二項の規定により読み替えられた同令第三条第一項に規定する文部科学大臣が定める者*5により代替措置が示されました。令和2年度において体験を予定していたにもかかわらず新型コロナウイルス感染症の影響により実施が困難となった学生には以下のいずれかの方法で対応可能であることが示されました。

(1) 大学等において、令和2年度までに、特別支援学校の教職課程において開設されている特別支援教育に関する科目の単位を1単位以上修得した場合
(2) 令和2年度までに、医療関係職種等の養成施設に指定されている大学等において開設される科目のうち介護等に関する専門的知識及び技術を重要な事項として含むものとして当該大学等が認めるものの単位を1単位以上修得した場合
(3) 令和2年度までに、文部科学大臣厚生労働大臣の確認を受けた大学等における社会福祉に関する実習演習科目の単位を1単位以上修得した場合
(4) 在学する大学等において、令和2年度に(独)国立特別支援教育総合研究所が開設する免許法認定通信教育の科目に係る印刷教材の学修の成果を確認する措置を受けた場合

このほか、既卒者向けにさらに3つの代替措置が設けられました。

 さて、本学の対応ですが、特別支援学校における体験を実施できなかった70数名の学生に対しては代替措置は適用せず次年度以降に持ち越すこと、社会福祉施設等における体験を中止とした3年次学生に対しては(1)の特別支援教育に関する科目の履修をもって代替することとしました。本学では特別支援学校教諭免許状の第3欄の科目(免許状に定められることとなる特別支援教育領域以外の領域に関する科目)として認定を受けている科目を学部共通科目(一般教育)として必修としています。よって、新たに科目を履修させることなく代替が可能でした。

 当然ながら、介護等体験の制度趣旨も踏まえ、介護、介助、交流に準ずる内容を新規に実施することも検討しましたが、学内外のリソースの関係上、上記の対応となりました。

 

代替措置完了証明書

 通常であれば、介護等体験を実施した学生に対しては学校又は施設から「介護等体験証明書」を発行していただき、これを一括申請の際に添付して免許状を申請することとなります。しかしながら今年度に代替措置を適用した学生には、大学長が代替措置を適用した旨を証明することとなりました。

 大学長の証明にあたっては、対象学生がかなりの数に及んだため、学長印を印影印刷とする学内手続きを経て多少なりとも作業負担を減らすこととしました。

 

おわりに

 このような状況の中、実施に向け調整いただいた関係者の皆様や実際に受け入れていただいた学校、施設の皆様には本当に感謝しています。ありがとうございます。

 教職課程運営にあっては、この先数十年間、卒業生から在学時の免許状(単位)取得状況の照会があった際には、これら例外的な対応事例があった旨を念頭に置いておくことが重要であり、現在の教職課程担当者が異動になっても、コロナ対応事例を確実に引き継げる仕組みづくりを各大学において検討する必要があるように思います。

 

 

*1:小川裕子(2009).国立教員養成大学・学部における「介護等体験」単位化の実態 : 「介護等体験」の主体性確立を目指して.静岡大学教育実践総合センター紀要,17,59-63.

*2:現在は単位の実質化との関係でさらに低い割合にあると思われます。

*3:リンク先は各都道府県・指定都市教育員会特別支援学校担当部局等宛てに出された通知ですが、「別添」として各大学宛ての通知が添付されています。

*4:12ページの「別添1」参照。

*5:16ページの「別添2」参照。