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どこかの大学職員のブログ

「教職専任教員」とはなにか?

 

本記事の要約

教職課程認定基準改正により「専任教員」が「教職専任教員」に改められましたが、大きな変更点は①教職課程運営上問題があると指摘されていた「教職支援センター」等に所属する教員を専任教員としてカウントできない問題が解消され、②「ただし書教員」という概念が登場し一定範囲内で専任カウント可能となった の2点であり、みなし専任の扱いや共通開設科目担当教員の重複カウントの扱いに変更はありません。

 

「教職専任教員」の要件

「教職課程認定基準」の改正案が中教審教員養成部会に提出され、認定基準上の「専任教員」は「教職専任教員」と名称が改められることが示されました。

本記事では、「教職専任教員」に関する定義と解釈を整理します。以下、改正前の認定基準を「旧基準」、改正後の認定基準を「新基準」と表記します。

 

教職専任教員の要件は新基準3(7)に次のように定められました。

【新基準】

3 教育課程、教育研究実施組織(免許状の種類にかかわらず共通)

(7)認定を受けようとする課程には、以下の事項を満たす教職専任教員を置くものとする。

  ①専ら当該課程を有する学科等(全学的に教職課程を実施する組織を含む。以下教職専任教員に関する規定において同じ。)の教育研究に従事する者

  ②当該学科等の教職課程の授業を担当する者

  ③当該学科等の教職課程の編成に参画する者

  ④当該学科等の学生の教職指導を担当する者

 

まず、「以下の事項を満たす」の解釈です。以下の「いずれか」でしょうか、「すべて」でしょうか。当該規定の解釈は後者です。

上記②~④は旧来、「教職課程認定審査の確認事項」3(1)に規定されており、旧基準を補足するものでしたが、改正により新基準に格上げされ規定されることとなりました。これらは従来から「すべて」満たす必要があると解釈されてきましたので、新基準においても同様に解釈することとなります。加えて、①の要件は満たさなければならないものとして旧基準から引き継がれているものですので、結果、①~④すべてを満たすことが教職専任教員としてカウントするための要件となります。

 

③の「教職課程の編成に参画」はこれまで以下のように解釈事例が示されていました。

Q.手引き(H30年度開設用)のQ&A No21においては、専任教員の定義のひとつとして「②当該学科等の教育課程の編成に参画すること」とある。教職課程認定審査の確認事項の3(1)②では、「当該学科等の教職課程の編成に参画」となっている。必ずしも学科全体の教育課程の編成に参画しなければならないわけではなく、教職課程の編成に参画すればよい、との理解でよいか。

A.御質問のとおり、当該学科の「教職課程」の編成に参画していればよく、教育課程(卒 業や修了要件)に参画することまでを求めるものではない。

(教職課程再課程認定等説明会質問回答集(平成30年1月9日版)No.95)

 

しかしながら、改正後の大学設置基準の考え方に基づき①の要件を満たそうとすれば当然に教育課程の編成に参画することになるので、③の要件も自然に満たすようになるものと思います。

 

「籍を有する」から「専ら教育研究に従事」へ

ただし、①の要件については改正に伴い若干の変更が生じています。旧基準では次のように定められていました。

【旧基準】

3 教育課程、教員組織(免許状の種類にかかわらず共通)

(7)認定を受けようとする課程の担当教員のうち専任教員は、当該課程を有する学科等に籍を有する者でなければならない。(以下略)

 

「学科等に籍を有する」という考え方から「専ら…学科等の教育研究に従事する」という考え方への変更は大学設置基準の改正趣旨(籍ではなく学位プログラム実施への責任で専任性を判断しようとするもの)を反映したものです。

 

教職支援センター等の教員も「教職専任教員」としてカウント可能に

もう一点、新基準では当該課程を有する学科等に「(全学的に教職課程を実施する組織を含む。)」という補足が追加されました。これまで、教職支援センター等の「全学的に教職課程を実施する組織」に所属する教員は、申請学科等に籍を有していない場合には、当該学科等で専任教員としてカウントすることができませんでした。

Q.学科等にではなく、教職センターのような学内組織に所属する教員は、学科等の専任教員として含めてもよいか。

A.学科等の専任教員は、認定課程を有する学科等に籍を有する者でなければならないため、センターのみに籍を置く教員を専任教員に含めることはできない。(以下略)

(令和5年度開設用手引き<別冊>p.34、Q&A75)

 

新基準で「当該課程を有する学科等(全学的に教職課程を実施する組織を含む。」と規定されたことにより、センターのみに籍を有する教員であっても、上記の新基準3(7)の要件を満たせば教職専任教員としてカウント可能となりました。

ただし、「全学的に教職課程を実施する組織」である必要があるので、ライティングセンターや共通教育センターのみに籍を置く教員は引き続き教職専任教員としてはカウントできないことには注意が必要です。

 

その他の「教職専任教員」

ここまで、新基準3(7)について書いてきましたが、当該規定以外の規定にも教職専任教員とカウントできる場合があることが定められています。

 

「ただし書教員」

1点目です。

【新基準】

4-1 幼稚園教諭の教職課程の場合

(3)略

(※4)3(7)の規定にかかわらず、大学設置基準別表第1イ(1)備考第2号…のそれぞれのただし書に定める基幹教員で、3(7)②から④までの事項を満たす者(「ただし書教員」という。…)は、本表の必要教職専任教員数の合計の4分の1の範囲内で当該学科等の必要専任教員数に算入することができる…。

 

「ただし書教員」については改めて記事を書きたいと思いますが、要するに3(7)①の要件(専ら当該学科等の教育研究に従事する)を満たさずとも教職専任教員としてカウントできる場合があるということです。小中高特の課程でも同様の規定があります。

 

みなし専任教員

2点目です。

【新基準】

4-3 中学校教諭の教職課程の場合

(5)略

(※2)3(7)の規定にかかわらず、他学科等において開設する授業科目をあてる場合、当該他学科等の基幹教員を、認定を受けようとする学科等における当該科目を担当する教職専任教員とみなすことができる。

 

現行のいわゆる「みなし専任教員」を定めた規定で、改正後もその扱いは変わりません。他学科開設科目を担当教員ごと借りてきて、自学科等の教職専任教員にみなすという取扱いです。「みなす」ものであるため、3(7)の要件を満たす必要はありません。高校の課程にも同様の規定があります。

 

共通開設科目担当教員

3点目です。

【新基準】

4-8 授業科目を共通に開設できる場合の特例

(4)略

 ⅱ)複数の学科等において複数の教職課程を置く場合

  3(7)の規定にかかわらず、以下の場合は、それぞれの教職課程において、教職専任教員とすることができる

  ①「教科に関する専門的事項」

   略

  ②「各教科の指導法」、「複合科目」、「教育の基礎的理解に関する科目等」

   略

 

現行の、複数学科等で科目を共通開設した場合に当該複数学科で専任教員とカウントできる取扱いを定めたもので、その扱いに変わりはありません。

 

まとめ

ここまで見てきたとおり、教職専任教員に関する規定が散在していますが、旧基準からの変更点は、①全学的に教職課程を実施する組織に所属する教員も要件を満たせば教職専任教員としてカウント可能となること、②「ただし書教員」という概念が登場し一定範囲内で新たに教職専任教員としてカウント可能となることの2点です。