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どこかの大学職員のブログ

教職課程で学ぶ法制執務:全部改正と廃止制定

 

本記事のテーマ

法令等の改正の方法(全部改正と廃止制定)について、教職課程運営業務で馴染みのある「教職課程認定基準」と「課程認定審査の確認事項」を例に解説したいと思います[1]

 

全部改正

まずは全部改正です。全部改正とは、「既存の法令等の基本そのものは維持するとともに、その形式的な存続を図りながら、その具体的内容を全面的に改めること」(ぎょうせい法制執務研究会編『全訂 図解 法制執務入門』p.51)をいいます。

教職課程認定基準においては、平成19年5月10日の改正でこれが行われています。全部改正前後の題名、制定日を比較したものが下図です。

教職課程認定基準の全部改正

 

制定日は改められていませんが、題名が「教員免許課程認定審査基準」から「教職課程認定基準」に改められています。題名が変われば制定日も変わりそうなものですが、これについて、「この(全部改正の―引用者注)場合の法律の中身には題名も含まれ、…必要に応じて全部改正前の題名と異なる題名とすることは差支えない参議院法制局「『廃止制定』と『全部改正』」https://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column039.htmとされているようです。題名は改めるが、法令等そのものの基本は変わっていないと理解できます。

全部改正によって題名が改められた例として、スポーツ振興法スポーツ基本法などがあるようです(前掲webページ)

 

廃止制定

次に廃止制定です。廃止制定とは、「既存の法令等は一旦廃止することとし、代わりに新規の法令等を制定する形式をとって、既存の法令等の内容を全面的に改めること」(前掲書p.51)をいいます。

課程認定審査の確認事項においては、平成13年7月19日付けでこれが行われています。

課程認定審査の確認事項の廃止制定

 

題名は同じですが、制定日が改められています。題名が同じなら制定日も同じでいいのではと思いそうですが、これについて、「既存の法律の題名とこれに代わる新しい法律の題名とが同じであることは必ずしも珍しいことではありません(前掲webページ)とのことです。全部改正ではなく廃止制定がとられたということは、題名は同じでも新旧で継続性や連続性は薄いということなのでしょう。

廃止制定によって同名の題名が付けられたものとして、国籍法、国有財産法などがあるようです(前掲webページ)

 

まとめ

全部改正も廃止制定も法令等の内容を「全面的に改める」という点では同じです。どちらを採用するかの明確な基準はなく、新旧の法令等の連続性等から判断するようです。

 

 

 

[1] 「教職課程認定基準」も「課程認定審査の確認事項」も法令には含まれない内規ですが、改正の方法は法令に準じていますのでここでは「法令等」としてひとまとめにして用います。

『教職課程認定申請の手引き』の変更点(令和5年度開設用→令和6年度開設用)

 

今年度も手引きの変更点をチェックしました。

12月19日にメールにて配付された暫定版手引きにてチェックしていますので、今後配付予定の確定版とはページ数(箇条書き先頭の数字)等が異なる可能性があります。また、変更点のすべてを網羅するものではありませんのでご了承ください。

なお、チェック対象は<本体>のみで<別冊>は対象外です。

 

課程認定審査スケジュールについて

  • 1 申請期日が3/31から3/20に前倒し。

 

課程認定申請の要否

  • 2 申請の要否「要」「要審査」「不要」が「○」「△」「×」に。

 

変更届の提出の要否

  • 3 表形式から要否区分ごとの箇条書きに。
  • 3 「専任教員」が「教職専任教員」に改称(以下同じ)。

 

令和7年度開設予定のスケジュール

  • 5 確認事項1(1)③と④変更届に係る審査回数が2回に増加。これに伴い、当該届出の期日が9月末に加え11月末も追加(p,10にも反映)。

 

主な審査事項

  • 7 「教員組織」が「教育研究実施組織」に改称(以下同じ)。

 

必要提出書類

  • 11 「特別支援学校教諭免許状コアカリキュラム対応表」が追加(p.13、p.19、p.58-59も同様の理由による変更)。

 

事前相談について

  • 16 事前相談が任意から必須に
  • 16 事前相談申込み方法が「メール」から「予約フォーム」に変更。
  • 16 事前相談の午前中2枠の開始時刻が10分後ろ倒し。
  • 17 指定の事前相談資料以外でも準備ができている申請書類があれば事務的に確認する旨記載。

 

申請書の作成・提出方法

  • 18 申請書提出方法が「メール」から「Boxへのアップロード」に変更。提出した旨を「提出報告フォーム」に入力する手続きが追加。

 

様式第2号(概要)

  • 25 連携教職課程により認定を受けようとする場合には、認定を受けようとする免許状の種類のうしろに「(連携教職課程)」を付記。

 

様式第2号(教育課程及び教育研究実施組織)

  • 26 「ただし書教員」を記載する場合には氏名の左側に「●」を付す(p.65も同様)。
  • 38 66条の6の様式が変更(「数理、データ活用及び人工知能に関する科目又は情報機器の操作」が2段組に)。
  • 38 数理、データ活用及び人工知能に関する科目を設置する場合は、認定プログラムの一部の科目のみでなく認定科目すべての開設が必要である旨が追記。
  • 39 数理、データ活用及び人工知能に関する科目と情報機器の操作の両方の科目を設置する場合、いずれかの区分で2単位の取得が必要である旨が追記。
  • 45 特支課程の様式について、特別支援学校教諭免許状コアカリキュラムに対応する授業科目名には下線を引くことが追加(p.121 変更届においては下線ではなく「○」を付す)。

 

教職課程コアカリキュラム対応表

  • 51 対応表へのチェックは「◎」が廃止され、「○」のみに

 

シラバス

  • 61 学習指導要領等をテキストまたは参考書等に位置づけよと指導する根拠が追記。
  • 61 「「学生に対する評価」欄について、出席のみをもって加点することは教職課程の科目として適切ではないため、出席点などの表記は避けること。また、「学生に対する評価」欄に「試験」が含まれる場合は、授業計画に試験を行うことを明記すること。」の記述が削除。
  • 63 「教職実践演習の履修時期は、卒業年次の後期となる。それ以外の時期に実施する場合は、理由書(様式任意)を添付すること。」の記述が削除。

 

様式第3号

  • 67 「各教科の指導法・保育内容の指導法、教育の基礎的理解に関する科目等」の様式について、「科目区分」「必要事項」欄が廃止され、「担当形態」欄が新設

 

様式第4号

  • 72 教育研究業績書の様式改変(「教育上の能力に関する事項」欄が一つの枠に統合)。
  • 74 「授業科目と関連のある業績を記載すること。当該授業科目のキーワードとなる内容に触れているものの、業績自体は当該授業科目との関連が薄いものについては、「担当授業科目に関する研究業績等」には該当するとは言えない。」が追加。
  • 76 教育研究業績書の「概要」欄について、共著の場合は、【当該業績全体の概要】と【本人の執筆部分の概要】に欄を設けてそれぞれ記載することに変更。
  • 77-79 履歴書及び教育研究業績書の作成において特に注意すべき事項(事務担当者説明会配付資料)が新たに収録。

 

様式第5号

  • 81 教育実習の総時間数は1単位30時間を標準とすることが記載。

 

様式第7号ウ(具体的な履修カリキュラム)

  • 88 様式第3号同様、「科目区分」「必要事項」欄が廃止。

 

チェックリスト

(省略)

 

変更届の必要提出書類

  • 107 確認事項1(1)③と④に関する様式として「大学設置・学校法人審議会大学設置分科会運営委員会への事前相談の状況(様式任意)」「改組等の前後における教育課程及び教育研究実施組織の変更状況」が追加。
  • 107 変更届においてシラバスの提出は不要に
  • 108 共通開設とともに教職専任教員に係る変更を行う場合は履歴書・教育研究業績書の提出は不要に。

 

66条の6に定める科目の変更届様式

  • 123 記入例及び記入上の注意が追加。

 

設置の前後における学位等及び教職専任教員の所属の状況

  • 126-128 記入上の注意の記述が充実。

 

変更届の提出方法

  • 136 「メール」から、届出時期により「Boxへのアップロード」または「メール」に変更。

 

教職課程認定基準

  • 137-154 令和4年7月28日付け、令和4年11月25日付けの改正内容が反映。

 

教職課程認定審査の確認事項

  • 155-159 令和4年7月28日付け、令和4年11月25日付けの改正内容が反映。

 

教職課程認定審査運営内規

  • 160-162 令和4年11月25日付けの改正内容が反映。

 

教職課程認定大学実地視察規程

  • 163-164 令和4年11月25日付けの改正内容が反映。

 

学科等の目的・性格と免許状との相当関係について

  • 削除

 

学科等の目的・性格と免許状との相当関係に関する審査基準

  • 165 令和4年11月25日付けの改正内容が反映。

 

学科等の目的・性格と免許状との相当関係に関する審査基準について(解説)

  • 166 相当関係が認められ認定可となった例、相当関係に疑義が生じた例が追加。
  • 167 相当関係基準1(1)③の解説について、「この場合の「卒業要件等」とは、必ずしも認定を受けようとする免許状に関連する科目を当該学科等の卒業のための必修科目として設定することのみを指すのではなく、これら関連科目が卒業に必要な科目群に多分に含まれており、結果として卒業までにこれら関連科目を相当程度履修することとなるようなカリキュラムの編成がなされている場合も含む。」が追加。
  • 168 「2.審査に当たっての考え方」の記述が削除。

 

特別支援学校教諭免許状に係る審査の考え方

  • 177-178 令和4年7月28日付けの改正内容が反映。

 

「特別支援学校教諭免許状コアカリキュラム」の作成の背景と考え方

  • 213-236 追加

 

以上です。

教育研究業績書(p.72~)のあたりで、文章が不自然に切れている箇所が数箇所ありますので、これを修正するとおそらく確定版ではページ番号がズレてしまうと思います…。

 

 

教職課程認定基準の読み方:「又は」と「及び」に着目して

 

はじめに

法令用語としての「又は」や「及び」には一定の使用ルールが定められています。これを理解することが法令の正しい解釈を助け、法令に裏打ちされた実務の遂行を可能にします。

教職課程運営においては、免許法や同法施行規則等の法令や基準を理解することが欠かせません。なかでも教職課程認定基準(以下「認定基準」)は、「教職課程の認定を受けるのに必要な最低の基準」(認定基準1(2))であり、「この基準より低下した状態にならないようにする」(認定基準1(3))必要があるため、教職課程を開設・維持しようとする上で遵守しなければならない基準です。ところが、当該基準で用いられる「又は」や「及び」には、例外的用法や特殊な用法等が散見されます。そこで本記事では、認定基準における「又は」と「及び」の用法を取り上げ、これらをどう読んだらいいのか、その読み方を書いていきたいと思います。

なお、本記事では令和5年度開設用の『手引き』に収録されている令和3年12月22日最終改正の認定基準を参照します。

 

選択的接続詞:「又は」

原則

「又は」は2つまたは3つ以上の文言をつなぎその中のいずれかの文言を選択させる場合に用いる接続詞です(ぎょうせい法制執務研究会編『全訂 図説 法制執務入門』p.113)。

or」に相当し、「AかBか(そのいずれか一方)」を表す場合に用いられます。よって、Aを選択した場合、Bは選択されない(排他的)のが基本原則です。

 

例外的用法

ところが、例外的に「AかBか(またはその両方か)」を表す場合にも「又は」が用いられるケースがあります。

2 教育上の基本組織

(6)幼稚園教諭又は小学校教諭の教職課程は、教員養成を主たる目的とする学科等でなければ認定を受けることができない。

 

当該規定では、教員養成を主たる目的とする学科等でなければならないのは、①幼稚園教諭の課程のみの場合、②小学校教諭の課程のみの場合、③幼稚園教諭の課程と小学校教諭の課程の場合のいずれの読み方でも間違いにはなりません。

この「又は」は、一方を選択してももう一方が排除されない(非排他的)ため、「AかBか(またはその両方か)」(=and/or)を意味するものとして用いられています。

認定基準に限らず、法令一般においてまま見られる用法のようです。いずれか一方を指すものか、その両方を指す場合もあるのかの判断は外形的に判断することが不可能なので、規定の文脈から判断するほかありません。

 

特殊な用法

「又は」は一文のなかで2回使用することもできます。この場合、2通り(たすき掛け式、平行式)の解釈の仕方がありますが、認定基準中にはたすき掛け式の用例が見られます。

4-1 幼稚園教諭の教職課程の場合

(3)略

(※3)同一学科等において、小学校教諭の「教科に関する専門的事項」又は教科及び教科の指導法に関する科目における複数の事項を合わせた内容に係る科目(以下「複合科目」という。)と幼稚園教諭の「領域に関する専門的事項」又は「複合領域」の両方を担当する専任教員は、それぞれの課程において専任教員とすることができる。

 

これを図解すると次のようになります。

たすき掛け式の4通りの組み合わせはいずれも間違いではありません。

 

併合的接続詞:「及び」

「及び」は2つまたは3つ以上の文言をつなぐための接続詞です(前掲書p.108)。

and」に相当し、「AもBも」を表す場合に用いられます。

1 総則

(1)大学…は、…の認定を受けるにあたっては、免許法及び教育職員免許法施行規則…によるほか、この基準の定めるところにより認定をうけるものとする。

 

当該規定では、免許法と同法施行規則の両方に準拠しなければならないことを定めています。

 

読み方が難しい規定

ここまで「又は」と「及び」の読み方を整理してきましたが、以下の規定はどのように解釈すればよいでしょうか。

3 教育課程、教員組織(免許状の種類にかかわらず共通)

(9)以下に掲げる科目のそれぞれの専任教員において、少なくとも1人は教授でなければならない。

 ③「保育内容の指導法」又は「各教科の指導法」及び「教育の基礎的理解に関する科目等」

 

「又は」と「及び」が両方用いられています。当該規定の構造は1であり2ではありません。指導法科目か教職教養科目かという観点で構造化されているためです。

  1. 「保育内容の指導法」又は「各教科の指導法」及び「教育の基礎的理解に関する科目等」
  2. 「保育内容の指導法」又は「各教科の指導法」及び「教育の基礎的理解に関する科目等」

次に解釈です。少なくとも1人は教授でなければならないのはどの科目区分(上記「」で区切られているもの)でしょうか。実は1の解釈でも2の解釈でもありません。当該規定の解釈は、③として記載のある3つの科目区分のいずれかに1人教授がいればよい、というものです。「及び」とあるので少なくとも「教育の基礎的理解に関する科目等」には必ず教授が必要であるように読めますが、その必要はありません。

 

以下の規定における「及び」も「AもBも」という意とは異なる読み方をします。

4-1 幼稚園教諭の教職課程の場合

(3)幼稚園教諭の教職課程に配置する必要専任教員数は、以下のとおりとする。

 ・「保育内容の指導法」及び道徳、総合的な学習の時間等の指導法及び生徒指導、教育相談等に関する科目において1人以上

 ※非着色の「及び」はこれを含めた定型句です。

 

簡素化すれば「A及びBにおいて1人以上」となり、Aに1人とBに1人の計2人必要であるように読めますが、AかBに1人いればよいとするのが正しい解釈です。非排他的な「又は」(=and/or)に近い用法です。

 

次の規定における「及び」も同じです。

4-3 中学校教諭の教職課程の場合

(5)略

ⅱ)略

・「各教科の指導法」、教育の基礎的理解に関する科目(幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程及び特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解に係る部分に限る。)及び道徳、総合的な学習の時間等の指導法及び生徒指導、教育相談等に関する科目(道徳の理論及び指導法、総合的な学習の時間の指導法、特別活動の指導法、教育の方法及び技術、情報通信技術を活用した教育の理論及び方法に係る部分に限る。)において1人以上

 ※非着色の「及び」はこれを含めた定型句等です。

 

 

次の「又は」はどうでしょうか。

4-8 授業科目を共通に開設できる場合の特例

(2)略

ⅰ)略

② 道徳、総合的な学習の時間等の指導法及び生徒指導、教育相談等に関する科目(養護教諭及び栄養教諭の教職課程においては道徳、総合的な学習の時間等の内容及び生徒指導、教育相談等に関する科目)の教育の方法及び技術(情報機器及び教材の活用を含む。)(小学校教諭、中学校教諭、高等学校教諭の教職課程においては教育の方法及び技術、情報通信技術を活用した教育の理論及び方法に係る部分)又は教育相談(カウンセリングに関する基礎的な知識を含む。)の理論及び方法に係る部分

 ※非着色の「及び」はこれを含めた定型句等です。

 

授業科目を共通開設できる範囲を定めた規定です。この「又は」は一方を選択すればもう一方が排除される排他的な「又は」ではなく、例外用法として挙げた「AかBか(またはその両方か)」の非排他的な「又は」です。よって、「又は」の前の規定と後ろの規定の両方を同時に適用しても認定基準違反にはあたりません

 

その他

認定基準をチェックする過程でいくつか気になった規定がありました。

3 教育課程、教員組織(免許状の種類にかかわらず共通)

(6)認定を受けようとする課程の授業科目の担当教員は、その学歴、学位、資格、教育又は研究上の業績、実績並びに職務上の実績等を勘案して、当該科目を担当するために十分な能力を有すると認められる者でなければならない。

 

「及び」がないのに「並びに」が使われている用例です。「並びに」を「及び」にし、「~、~、~、~及び~」とするのが正しいように思いますが、「教育又は研究上の」という文言は実は「業績」だけでなく「実績」にもかかっています。

意図するところを正確に規定に落とし込めば「…その学歴、学位、資格、教育又は研究上の業績及び実績並びに職務上の実績等を勘案して…」とするのがいいように思います。

 

4-8 授業科目を共通に開設できる場合の特例

(2)略

 ⅵ)教育実践に関する科目の教職実践演習に係る部分については、幼稚園教諭、小学校教諭、中学校教諭、高等学校教諭の教職課程に共通に開設することができる。

 

並列される語句が3つ以上の場合は、最後の2つの語句だけを「及び」でつなぎますので、「…幼稚園教諭、小学校教諭、中学校教諭及び高等学校教諭の教職課程に…」とするのがいいように思います。

 

さいごに

認定基準には「AかBか」という用法以外の「又は」、「AもBも」という用法以外の「及び」が登場するので注意しましょう。

 

 

 

[参考文献]

平野敏彦(2015)「又は・若しくは・並びに・及び・かつ―法令用語釈義その3―」広島法科大学院論集、11、115-152頁。