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どこかの大学職員のブログ

自己点検・評価でチェックすべき教職課程の「法令由来事項」とはなにか?

 

執筆のきっかけ

教職課程事務担当者の実践コミュニティで次のような質問が出されました(筆者による補足を含めて質問文改変)。

 

  • 全国私立大学教職課程協会が発行した『「教職課程 自己点検・評価報告書」作成の手引き(令和4年度版)』における自己点検・評価の進め方第2プロセスに「教職課程支援センターによる法令由来事項の点検と各教職課程へのデータ等の扱いについての意見聴取」とあるが、この「法令由来事項」とは何をさすか?

 

課程認定申請を経験したことのある職員であれば、関係法令等をチェックし最低基準を確かめますので具体的な点検・評価項目が思い浮かぶかと思います。課程認定未経験者あるいは初任者にとっては、「法令由来事項」という表現はピンときにくいと思われるため、具体的な例示があってもよかったように思います。

 

実際の点検・評価項目は「法令由来事項」に限定されない

上記手引きでは、当該第2プロセスを次のように説明しています(下線強調は筆者)[1]

教職課程支援センターは、直ちに法令由来事項の充足状況の確認を行います。その際、教職カリキュラムの編成や授業シラバスを含む教育活動について法令などに違反していないかの疑義が生じた問題点を折出し、適宜各学部の教職課程員会に通知します。(p.52)

 

一般的には、「法令」といった場合には、法律、政令、府省令、告示、訓令等を指し、「教員養成部会決定」等の形式をとる組織の内部規律文書的性格のもの(例:教職課程認定基準)は含みません。しかしながら、上記の説明では下線部のような教職課程認定基準への委任事項までを点検・評価の対象として例示していることから、法令から委任される下位基準由来の事項についてもその対象とすることが適当であると読めます。よって、実際のチェックは「法令由来事項」までを対象にした方がよさそうです。

 

以下では、法令等に由来する点検・評価の具体的項目について、各種法令等ごとにいくつか挙げてみたいと思います。なお、下位基準等に委任されているものについては、原則、当該下位基準等の項目に記載しています。また、以下に挙げる項目が点検・評価項目のすべてではありませんのでご注意ください。

 

具体的な点検・評価項目

教育職員免許法

特になし。

 

教育職員免許法施行規則

変更届

  • 認定課程の教育課程等を変更する際には、あらかじめ文部科学大臣に届け出ているか(=変更届の提出漏れがないか)。(21条2項)

情報公開

  • 教員養成の状況に関する情報について、刊行物への掲載、インターネットの利用等により広く公表しているか。(22条の6)

自己点検・評価

  • 自己点検・評価を行い、その結果を公表しているか。(22条の8)

 

教職課程認定基準

教育課程

  • 最低修得単位数以上の授業科目が開設されているか。(3(1))
  • 免許状の種類に応じて、各科目区分ごとに必要な科目が開設されているか。(4-1(1)ほか)
  • 中高の教科に関する専門的事項は、一般的包括的内容の履修が保証されているか。(4-3(1)ほか)
  • 中高の課程において、他学科の科目を借りる場合に、専門的事項に関する科目の半数又は自学科で開設する科目の単位の合計数を超えていないか。(4-3(2)ほか)
  • 中(高)の課程において、各教科の指導法は8(4)単位以上開設されているか。(4-3(3)ほか)
  • 授業科目を共通に開設する場合の取扱いに違反はないか。(4-8)

教員組織

  • 免許状の種類に応じて、必要な教員数が配置されているか。(3(5)ほか)
  • 科目の担当教員は、科目を担当するために十分な能力を有しているか。(3(6))
  • 専任教員は、当該課程を有する学科等に籍を置いているか。(3(7))
  • 各科目区分ごとに、少なくとも1人は教授がいるか。(3(9))
  • 専任教員は、複数の科目区分において重複カウントされていないか。(3(10))
  • 入学定員が規定数を超える場合には、超える人数に応じて専任教員が増員されているか。(4-1(3)※1ほか)

教育実習

  • 入学定員に応じて、必要な学級数が確保されているか。(12(1))

 

教職課程認定審査の確認事項

基本組織

  • 幼小課程において、「教員養成を主たる目的とする学科等」の要件に適合しているか。(1(4))

教育課程

  • 授業科目の名称は、各科目に含めることが必要な事項の内容等を適切に表現した名称となっているか。(2(3))

教員組織

  • 専任教員は、専任教員としての要件を満たしているか。(3(1))

 

学科等の目的・性格と免許状との相当関係に関する審査基準
  • 学科等の目的・性格と免許状との相当関係は十分か。(1)

 

その他
  • 教職課程コアカリキュラム、外国語(英語)コアカリキュラム作成対象科目は、当該コアカリキュラムに定める到達目標を満たしているか。
  • 全学的に教職課程を総括する組織が整備されているか。

 

教職課程支援センターはどこまでを点検すべきか

つらつらと列記しましたが、手引きでは、点検・評価の第2プロセスとして全学的に教職課程を統括する組織としての教職課程支援センターが法令由来事項をチェックしたのち、第3プロセス以降で各学科の教職課程委員会に点検・評価主体が移ります。とすると、統括組織としての教職課程支援センターとしては、免許法施行規則に由来する事項のみを取扱い、教職課程認定基準以下の事項については各学科の教職課程委員会等に委任するということも方法の一つかと思いました。

上記の点検・評価の進め方については一例であり、手引きにも記載があるように「各大学の規模・地理的条件(例えば、各学部分散型)、教職課程の種類・性格(例えば、開放制、養成系)に応じて大学固有の実施手順を確立」(p.52)し進めていくことがなによりも重要だろうと思います。

 

 

[1] 質問者が挙げた令和4年度版の手引きが手元になく、webページでも確認できなかったので、令和2年11月24日開催の「教職課程の質保証のためのガイドライン検討会議(第1回)」資料7-2、全国私立大学教職課程協会「私立大学における教職課程質保証評価の在り方に関する研究報告書」(令和2年3月18日)から引用しています。