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どこかの大学職員のブログ

これだけ読めばOK!中教審「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修の在り方について(中間まとめ)」―「第Ⅰ部 総論」編―

 

はじめに

教員の養成・採用・研修のあり方が大きな転換期を迎えています。

9月9日に開催された中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会(第8回)・基本問題小委員会(第8回) 合同会議において、上記をめぐる中間まとめ(案)が公表されました。

www.mext.go.jp

49ページに及ぶ中間まとめ(案)から、教職課程事務担当者が目を通しておきたい箇所を抜粋しました。主に、これまでに実施された制度改正内容今後の改革の方向性に関する記述を抜粋しています。

以下はすべて引用であり、下線による強調は筆者によるものです。

 

第Ⅰ部 総論

3. 教師の養成、免許、採用、研修に関する制度及び実態

(1)養成

①.制度の概要及び実態

 …。

 教職課程には、①教科及び教科の指導法に関する科目、②教育の基礎的理解に関する科目、③道徳、総合的な学習の時間等の指導法及び生徒指導、教育相談等に関する科目、④教育実践に関する科目(教育実習を含む。)、⑤大学が独自に設定する科目の5つの科目区分があり、教育職員免許法及び教育職員免許法施行規則において、区分ごとの最低修得単位数を設定している。

 …。

 教員免許状の取得に必要な単位数については、これまでも総単位数を増加させないことを前提として、新たな教育課題に対応できるよう教職課程の内容を精選•重点化してきた。具体的には、平成28年11月の教育職員免許法の改正及び平成29年11月の教育職員免許法施行規則の改正により、教科に関する科目と教職に関する科目の「大くくり化」や、特別支援教育の必修単位化をはじめとする教職課程の内容の充実を図るとともに、教職課程のうち「教職に関する科目」において共通的に修得すべき資質能力を明確化した教職課程コアカリキュラムを作成した。改正法令及びコアカリキュラムを反映した教職課程については、審査・認定のプロセスを経て、令和元年度(平成31年度)の入学生より適用されている。

 

②. 「令和の日本型学校教育」実現に向け、既に実施した制度改正

教員養成フラッグシップ大学の創設

 …。

 教員養成フラッグシップ大学には、新たな社会の到来を見据え、教育現場や教育行政、NPOや企業、関連分野の学問研究において優れた業績や実績を有する他大学や研究機関等と緊密に連携しつつ、新しいプログラムを研究・開発するなどの先導的・革新的な取組を行うとともに、取組から得られた知見を他の教員養成大学や教職課程を有する大学に展開し、我が国の教員養成の在り方を変革していく牽引役となることが求められている。

 このため、Society5.0 時代にふさわしい教員養成カリキュラムの研究開発を行うために特別の授業内容、指導方法等を積極的に取り入れることができるよう、指定大学に対する教職課程等に関する特例が新設されるとともに、令和4年3月には4つの大学が指定され、各大学における取組が開始されたところである。

 

介護等体験の対象施設の拡大

 令和3年4月に、小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律施行規則を改正した。これにより、介護等の体験を行う施設の対象を、特別支援学級通級指導教室不登校児童生徒の学習活動に対する支援を行う公立の教育施設放課後等デイサービス等にまで拡大された。

 

教職課程における義務教育特例の創設

 また、小学校の免許保有を促す観点から、令和3年8月に教職課程認定基準を改正した。具体的には、小学校と中学校の教職課程の間において科目や専任教員の共通化の範囲を拡大(義務教育特例)するとともに、小学校免許状の教職課程の設置の際の科目開設や専任教員配置の要件の緩和を行った。本改正は令和4年4月から適用されており、今後こうした特例を活用しながら、教職課程において小学校と中学校の免許状を同時に取得する者の増加が期待される。

 

教職課程におけるICT活用に関する内容の充実

 ICT活用に関しては、令和4年度入学生より新たに「情報通信技術を活用した教育の理論及び方法」を必修単位化した。また、必修科目の「情報機器の操作」について、「数理・データ活用及び人工知能に関する科目」と「情報機器の操作」のいずれかを選択するように改めるとともに、「教職実践演習」においてもICTを活用した演習(例えば模擬授業等)を行うことにするなど、教職課程の各段階を通じて内容の充実を図っている。

 

特別支援学校教諭免許状コアカリキュラムの策定

 令和4年7月、特別支援教育を担う教師の専門性の向上を図る観点から、教育職員免許法施行規則を改正し、特別支援学校教諭免許状の修得に当たって必要となる内容として、特別支援学校学習指導要領等を根拠にした、知的障害者である子供に対する教育を行う特別支援学校の各教科等、自立活動、重複障害等に関する教育課程の取扱いや発達障害を明記する(令和6年4月1日施行)とともに、教職課程の内容や水準を全国的に担保するため、小学校等の教職課程同様、共通的に修得すべき資質・能力を示した特別支援学校教諭免許状コアカリキュラムを策定した。

 

(2)免許

②. 「令和の日本型学校教育」実現に向け、既に実施した制度改正

教員免許更新制の発展的解消

 「教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律」によって、教員免許更新制を発展的に解消し、「新たな教師の学びの姿」を実現する体制を構築することとした。これにより、普通免許状及び特別免許状のうち、令和4年7月1日の時点で有効な免許状(休眠状態のものも含む。)については、同日以降、有効期間の定めのないものとなる。

 また、更新をしなかったことにより失効した免許状についても、都道府県教育委員会に再授与申請手続を行うことで、有効期間の定めのない免許状の授与を受けることが可能となる。

 

他の学校種の普通免許状の授与を受ける際に必要な最低在職年数の緩和

 あわせて、同法によって、普通免許状を有する者が他の学校種の普通免許状の授与を受けようとする場合に必要な最低在職年数について、当該年数に含めることができる勤務経験の対象を拡大した。これにより、例えば、中学校教員が小学校で専科指導を行った場合の経験も、最低在職年数に通算できることとなり、現職教員の小中免許両方の保有が促されることになるほか、日本人学校や、国際協力機構(JICA)の海外協力隊で外国の教員として勤務した経験を加算することが可能になり、多様な経験を積んだ教師の幅広い登用が促進されることになる。

 

(3)採用

①. 制度の概要及び実態

 …。

 この10年間の小学校の採用倍率は、一貫して低下傾向にあり、令和4年度は2.5倍である。採用者数は大量退職を反映して増加傾向が長く続いていたが、令和元年度をピークに減少に転じた。一方、受験者数は減少しているが、内訳を見ると、新規学卒者は長く横ばいであり、令和元年度に一旦約5%低下したが、その後は横ばいを続けている。この点を踏まえると、受験者数の減少傾向は、臨時的任用教員や非常勤講師などを続けながら採用試験に再チャレンジしてきた層が正規採用され、既卒の受験者が減少していることなどが理由と考えられる。

 一方、中学校の採用倍率については、10年前から横ばいを保っていたものの、この5年間で3割低下しており、令和4年度は4.7倍である。採用数は、10年前から横ばいであったが、この5年で若干増加傾向にある。一方、受験者数はこの5年間で急速に減少しているが、既卒者とともに、新規学卒者も1割程度低下している。

 また高等学校の採用倍率については、平成30年度~令和2年度にかけて減少した後、令和3年度で若干上昇したが、令和4年度は再び減少し5.4倍である。採用者数は大きく変化していないが、受験者数については、既卒者・新規学卒者ともに3割弱低下している。中学校・高等学校においては教員養成大学・学部ではない一般学部において、教職課程を履修し教員免許状を取得する学生が多いことから、中学校・高等学校の受験者数は、小学校に比して民間の採用状況に左右されやすい側面もある。

 …。

 

4. 今後の改革の方向性

(1)「新たな教師の学びの姿」の実現

②. 「理論と実践の往還」の手法による授業観・学習観の転換

 …。

 …。研究者教員が理論を、実務家教員が実践や実習を担当し、それぞれが分断されているという構図ではなく、教員間の連携・協働により、教職課程を運営していく必要がある。

 令和3年答申が示す子供一人一人の学びの姿は、教師及び教職志願者が子供の頃に受けてきた授業とは必ずしも一致しない可能性がある。また、子供たちの実態も、教師及び教職志願者が自ら経験してきた以上に多様化している。

 教員養成段階においては、これまでの教育の単なる再生産に陥るのではなく、教職志願者の「授業観・学習観」の転換を図り、「令和の日本型学校教育」を担うにふさわしい教師を育成する必要がある。

 

(3) 教職志望者の多様化や、教師のライフサイクルの変化を踏まえた育成と、安定的な確保

①. 多様な教職志望者への対応

 大学での教員養成については、幅広い教養を学びつつ教師としての専門性を磨く、という意義があり、教職課程の修得の結果として授与される教員免許状には、教壇に立つ上で最低限の能力を公証するという性格がある。これまでの教職課程の見直しにおいては、教員免許状の取得に必要な総単位数は増加させない方向で改革を進めてきた。一方、教職課程を修めるためには、本来の大学卒業に必要な単位数以上の単位を修得しなければならず、学生の負担は少なくない。

 教職を目指す学生の中には、キャリア形成の一貫として留学や教職以外の資格の取得、学校現場やNPO、民間企業等でのインターンシップ等を志向する者もいる。編入学や転入学後に、教職を目指す学生もいるが、現在の教職課程は、こうした多様な学生像に対応できていないとの指摘もある。

 …。

 

「第Ⅱ部 各論」編へ続く

「第Ⅱ部 各論」部は別記事にまとめます。